神戸大学が国内2万人を対象に行った調査によって、幸福度に最も影響を与えるのは「自己決定」だという結果が明らかになりました。
所得や学歴よりも、自分で選択し行動することが幸福感につながる。
これは、福祉の現場でも非常に重要な視点だと思います。
認知症の方や高齢で身の回りのことが難しくなった方、障がいのある方にとって、支援を受けることは必要不可欠ですが、その中でも「自分で選べること」が幸福感を大きく左右すると思います。
福祉タクシーの担い手として、利用者の自己決定を尊重する機会を作っていきたいものです。
1. 幸福度は所得や学歴では決まらない
一般的に、幸福度は収入や学歴によって左右されると考えられがちですが、研究によると「自己決定」が幸福に大きな影響を与えることが分かっています。
例えば、収入が高くても自由がない仕事に不満を感じる人は多いですが、収入が低くても自分で選んだ生活を送っている人は、幸福度が高い傾向にあるようです。
自分の選択で生きることができれば、困難に直面しても他責にせず、より主体的に考えることができ、その結果、人生の満足度が向上するんだと思います。
2. 自己決定がもたらす心理的メリット
自己決定の機会があると、以下のようなメリットが生まれます。
- 達成感や満足感を得られる
- ストレスが軽減される
- 精神的な安定につながる
特に高齢者にとって、自分で買い物の時間や場所を決めることは、生活の質を向上させる要素の一つです。
ただ、すべてを誰かに決められると、心理的な負担が増し、幸福度が低下するので、たとえ大きな決断が難しくても、日々の「何を食べるか」「どこへ行くか」を自分で決めるだけでも、幸福感の向上に繋がります。
日常の中で、自己決定の機会を確保することが大切です。

3. 高齢者や障がい者にとっての自己決定の難しさ
ただ、高齢者や障がい者にとって、自己決定は容易ではありません。
- 意思疎通が難しく、自分の気持ちを表明できない
- 過度なリスク管理により、選択の幅が狭められる
- 周囲の意見に従うことが習慣化し、自分の意思を伝えづらい
- 移動手段の制限により、自分の意思で行動できる範囲が狭まる
特に、移動の自由が制限されることは、心理的ストレスの増加につながります。
例えば、車いす利用者が公共交通機関を使う際、バリアフリー環境や人手不足の影響を受けやすく、その結果、家族や介護者の都合に合わせるしかなくなり、「外出を諦める」ケースも多いと聞きます。
結果、外出機会の減少に繋がり、孤独感や抑うつ傾向を高める要因にもなります。
こうした問題を解決するためには、移動の自由を支援するサービスが求められます。
4. 福祉タクシーが実現する「自己決定」の支援
福祉タクシーは、高齢者や障がい者が自分の意思で外出できる手段の一つです。
- 好きな時に病院や買い物へ行ける
- 付き添いサービスを利用すれば、安心して外出できる
- 趣味や娯楽を楽しめることで、生活の質が向上する
4-1. 孤独感の軽減と社会的つながりの強化
移動手段が限られると、社会との接点が減り、孤立しやすくなります。
福祉タクシーを利用すれば、通院や買い物だけでなく、趣味の集まりや地域イベントへの参加も可能になりますし、同じような状況にある人々との交流が増えることで、心理的な安心感が生まれます。
4-2. 自己決定を尊重する社会の実現
福祉タクシーの導入は、「行きたい場所に行ける自由」を持つことを意味します。
これは単なる利便性の向上ではなく、自己決定の権利を支える仕組みとして機能します。
移動手段の選択肢が増えることで、自己決定を尊重する社会の実現にも貢献できると思っています。
4-3. これからの時代に求められる移動支援
少子高齢化が進む中で、公共交通機関の縮小や高齢ドライバーの免許返納が進み、移動支援のニーズはますます高まっています。
特に地方では、高齢者や障がい者が自由に移動できる環境の整備が急務です。
福祉タクシーは、こうした課題を解決する手段の一つとして、今後さらに重要な役割を果たしていくと信じています。
5. まとめ
幸福度を決めるのは、所得や学歴ではなく「自己決定」。
ですが、高齢者や障がい者は移動手段の制約や支援への依存により、自己決定が難しい状況に置かれやすいので、こうした課題を解決する手段の一つが福祉タクシーです。
好きな時に外出できることで、医療・買い物・娯楽などの選択肢が広がり、社会参加の機会が増える。
結果として、孤独感が軽減され、生活の質が向上する。
今後の移動支援は、単なる交通手段の提供ではなく、自己決定を支援する社会インフラとしての役割を担っていきます。
福祉タクシーの活用が広がることで、誰もが自分の意思で人生を選択できる、より豊かな社会の実現に繋がると信じています。